高速・高精度の動作を実現するスカラロボットですが、いったいどのような工程を担うことができるのでしょうか。ここでは、スカラロボットが使われる工程と、加工を成立させるために必要な位置決めの知識、そして特殊な機能について説明します。
(1)スカラロボットが使われる工程
スカラロボットができることは、ロボット先端を可動範囲内で水平移動し、その地点で先端を下降・上昇することです。ロボット自体はこのように単純な動作をするだけなのですが、ロボット先端部に様々な機能を持つユニットを付加することにより、生産ラインにおける様々な工程を自動化することが可能です。以下に代表的な工程とそれに用いるユニットを紹介します。
①ピック&プレース(付加するユニット:吸着パッド or チャックハンド)
ピック&プレースとは、ワーク(対象物)をある場所から取り出し(=ピック)、目的の場所に置く(=プレース)一連の動作のことです。
ワークの組付け工程や、トレイなどの容器への整列工程に使われます。スカラロボットの先端に、ワークを真空ポンプによる吸着力でつかむ吸着パッドというユニットを付加する場合と、ワークをはさんで掴むチャックハンドというユニットを付加する場合があります。これらは部品の形状・重量・剛性でどのように把持すればよいかを考えながら選択します。
②ネジ締め(付加するユニット:電動ドライバ)
スカラロボットの先端に電動ドライバを付加することでネジ締め工程を自動化することができます。
複数の箇所をネジ締めする場合でも、ネジ締め箇所をプログラミングしておくことで、自動かつ高速にネジ締めを行うことができます。
③圧入(付加するユニット:製品に合わせた形状の治具)
スカラロボットのZ軸にトルク制御機能があるタイプでは、ロボット先端部がワークを押し付ける推力を制御できます。
この機能を利用して、荷重を制御した高精度な圧入工程を実現します。
④材料塗布(付加するユニット:ディスペンサ)
スカラロボットの先端にディスペンサと呼ばれるゲル状材料の吐出機を取り付ければ、接着材などを塗布する工程を自動化できます。
材料を塗布する位置や軌跡をプログラミングすることでロボットが制御しますので、手作業で実施するよりも高速・高精度を実現することができます。
(2)ロボットとワークの位置決め
先述の通り、スカラロボットを使うことで様々な工程を自動化することができます。
ただし注意点があります。それはロボットに対するワークの位置決めです。
ロボットはあるべき位置にワークがあることを前提として動作を開始します。この位置決めの方法には大きく2通りあります。
①ワークの外形を利用して位置決め
単純な機構として位置決めピンによる位置決めがあります。ワーク自身に設けた加工基準穴と設備側に設けたピンを嵌めることで位置決めします。
さらに単純な機構として、ワークを壁に押し付ける等の方法で位置決めする方法もあります。この場合は押し付けた面と加工部位の精度が加工精度に影響します。
比較的安価な位置決め方法ですが、ワーク形状について製品設計者と生産技術者が連携して設計することが必要です。
②カメラによる位置補正
カメラの視野角に入る程度で大体の位置に設置されたワークを、固定カメラもしくはロボットの先端に取り付けたカメラを用いて位置補正します。
カメラを利用する分、高価な手段となります。製品の外形を利用できない場合に利用します。
(3)便利な特殊機能
先述のトルク制御のように、スカラロボットには便利な特殊機能をもつタイプがあります。これらの機能を知ることで、スカラロボットの用途が広がります。
①協調ロボ
一つのワークに対し、複数のロボットを同期させて動作します。この機能があることでロボット同士が衝突することなく、協調した動作を実現します。
レイアウトをコンパクトにしたい場合や、製品が大きく両手で持たないといけないような場合に利用する機能です。
②インバースタイプ
一般的には設備のテーブル上にロボットを固定して利用するタイプが主流であり、ワークに対してロボットは上からアクセスします。
一方、インバースタイプでは下から上に加工します。使い方次第で設備のダウンサイジングに貢献することができます。
③安全カバー
ロボットは便利な機械ですが、使い方を間違えると経営そのものを揺るがしかねない大事故にもつながります。
そのため、定格出力が80Wを超えるものは労働安全衛生規則により、人とロボットを柵で分離しなければならないと定められています。
ただし、何かしらの対策を講じてロボットと人が接触した際の危険性が無いと評価された場合は、柵などの対応は不要となります。そうなると、同じエリアで人とロボットが協働作業が可能となります。
これを実現する安全策として注目されているのは、静電容量の変化で検出するセンサです。ロボットを覆うカバーの表面がセンサの検出部となっており、人とロボットが接触するとロボットが安全に停止します。
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